“言葉”から巡らせた思考の雑記 -偽物語 かれんビー其ノ肆-

見所のありすぎた第4話でした。紙芝居アニメとも言われていますが、それでもその人気が大きいのはやはりキャラクターの個性とデザインが良いからでしょう。

髪を切り、コンタクトにした羽川翼
金髪、ロリ、美少女の忍野忍

忍の声優が坂本真綾さんになりましたね。少し違和感を感じたんですが、キャラの背景などを考えると真綾さんの上品で少し無機質というか中性的な声が適役だなと改めて思いました。「かかっ」という笑い方が印象的で素敵だったと思います。

今回はこの二人が大いに個性を発揮してくれた回だったと思います。傷物語への期待も高まる1話ではなかったでしょうか。あと魔女宅ネタがあったり、提供バックがゆるゆりのなもり氏だったりかな(笑)

さてこの偽物語を見る上でやはり注目したいのは、“言葉”だと思うのです。普段、意識的には考えないが本能でわかってることだったり、なるほどと思ったりする言葉があるので、今回は第4話から4つほどピックアップしてみたいと思います。

1.「正義の第一条件は正しいことじゃない。強いことだ。だから正義は必ず勝つんだ。いい加減それくらいわかれよ。それがわからないうちは、お前達のやっていることはいつまでたっても__ただの正義の味方ごっこで」偽物だ。 原作169Pから引用

暦が妹達ファイヤーシスターズに向けて言い放つ言葉。正義っていうのは正しいから強いのではなく、強いから正しいと。これはどうしようもない真理だと思いました。実際、世の中の仕組みを見るとそう感じることは多々あると思います。自分はスポーツをやっているので思うことでもありますが、巧いやつより強いやつの方が生き残る、ということは肌で実感しています。いくら言葉や考えがしっかりしていたとしても、泥臭くて実行できる奴の方が世の中ではなんだかんだ成功する仕組みもこれに似た考えがあるでしょう。権力や地位を持ってる者が、たとえ正しくなくても社会を回す影響力を持っているという点も。どうしようもない理不尽であり、それが真理でもある。そんなことを感じる言葉でした。

暦も自分の経験から発している言葉で、この後羽川さんから同属嫌悪、自己嫌悪という言葉をかけられています。己に力がないことを嫌というほどわかっている彼だからこそ出る言葉だったのだと思います。そして何よりそれを指摘した羽川さんが圧倒的正義で偽物ではない本物だということがうまく表現されていて面白い場面でもありました。

2.「僕や火憐ちゃんや月火ちゃんが、自分の弱さを受け止めなければならないように__お前は、自分の強さを受け止めなければならない」 原作174Pから引用

暦が羽川さんに向けて言う言葉。人が自分の弱さを受け止めながらそれでも前に進んでいくというのは人生のどこかで誰しもが聞いたり、経験することはあると思います。しかし、強き者が自分が強いと自認しなければならないという場面はあまり出くわさないと思う。日本的な謙遜の文化で考えるとそれは、あまりにもおこがましかったり、自惚れや目立ちたがりと言った感じで批判されることでもある。しかしあくまで“自認”である以上誰かに言う必要はない。ひけらかすから批判されるのであって、本当に自分の強さを自認している人ならばそんなこともしないだろう。自分の強さをしっかり認識し物事を推し量れる力が大事だということなのだろう。強すぎることは正しすぎるということであり、強さをコントロールすることが世の中で成功していく鍵でもあるとも思ったり。

羽川さんがいろいろうまく言ってないのは正しさが暴走しすぎているからなんだろうなあと思う言葉ですね。

3.「無論、偽物じゃからと言って本物の技が使えんわけではないか__偽物じゃからこそ、本物よりも本物らしいということもあろう」 原作185Pから引用

忍が暦と貝木について話している時に言う言葉。本物を天才に置き換えて考えてもいいのかなと。世の中に天才は少ない。ほとんどが凡人。でも凡人の中でも、凡人だからこそ努力して天才に追いつこうと努力している人がいる。そして努力家と言われる彼らは実際天才よりも天才らしい。天才はもとが凄い分、自分が凄いということに無自覚であることが多い。しかし努力した凡人は自分の駄目さを自覚して努力し、努力して得た凄さというものに自認ができている。なんだか正義の話にも通じるものがありますね。改めて考えると自明のことなんだけど、意識からわざと遠ざけていることだなと思います。特に自分ができない言い訳に、天才と凡人とわけてしまう。これは考えるということを自ら諦めてしまっていることにもなる。そうなりたくはないなと思ったりもしたり。いろいろ思考がぐるぐると回る良い言葉でした。

4.「恋人も、友達も、後輩も、妹御も__みんなこぞって死んでしもうて消えてしもうて、お前様と儂だけが残るわけじゃ。お前様が誰とどんな絆を築こうと、時間がその絆を破綻させてしまう」 原作191Pから引用

忍が暦と会話している時の言葉。時間が解決するとはまた対極的な言葉。これは大学に入ってから顕著に感じることですね。大学1年の時はよく話したのになーとか思う人がいたり、昔は年賀状のやりとりしてたのになーとか思う人がいたり時間によって離れてしまったものがけっこうあるなと。定期的に直接会って縁を紡いでいかなければと思わせる言葉ですね。短い人生できるだけ多くの人と関わりたいけど、関わるだけでなく全員とずっと仲良くしたいものです。

物語の中では吸血鬼であるがゆえに、そのような未来が待っているということを忍が語ることで改めて暦に認識させる切ない部分でもあります。それでも様々なものを背負って生きていこうとしている暦に“強さ”を感じます。今まで散々強いから正しいと言ってきましたが、それは確かに正しさからくる強さもあるのだということも感じられてなりません。


4つの言葉について徒然と考えましたが、やはりどこか一つの場所に考えが集中してしまう気がします。正しさ、強さ、本物、偽物。それはやはりこの偽物語という小説がしっかりとテーマ性を持った作品であるのだと改めて感じさせます。すごいのは普通に堅っ苦しくなく面白く読めてしまうところですかね。物語シリーズ傾物語の途中までしか読んでいないので、いろいろ考えながら楽しんで読んでいきたいです。


※思ったより長文になってしまい見直すのめんどうなので整合性の取れてない文章も多々あると思いますがご愛敬でお願いします。